町田市相原にある法政大学の社会学部澤柿教伸准教授が、今年11月末頃出発予定の第63次南極地域観測隊越冬隊長に決定しました。12月末頃、南極昭和基地に到着後、現地で1年間滞在し、さまざまな研究観測を行い、2023年3月に帰国予定です。
南極の変化を確かめ続けたい
富山県に生まれ、剱岳を見て育ったという澤柿さん。南極に興味を持ったきっかけは、中学時代に図書室で読んだ探検家の本でした。アムンゼンとスコットの南極点到達競争とほぼ同時に挑んだ探検家白瀬矗(のぶ)や、映画「南極物語」等で南極に関わった人々を身近に感じ、南極に行きたいと思うように。進学した北海道大学では山岳部に入部、国内外の山に年間100日以上登ったことで地質学に興味を持ち、氷河地質学を研究。


ヒマラヤ山脈や北極圏等寒冷地域の野外調査を行っていた大学院博士課程1年の27歳で指導教員から声が掛かり、第34次南極越冬隊に初参加。39歳で第47次越冬隊、45歳で第53次夏隊の他、スペイン基地でも調査に参加しています。
南極を覆う氷が縮小した原因は温暖化で暖まった海水であることを検証する等、現地での謎の解明に携わることは自然地理学者冥利(みょうり)に尽き、特に「南極の純粋さと人を寄せつけない厳しさは格別」と澤柿さん。


第63次観測隊では越冬隊長として、30〜40人の観測隊全体の指揮・管理や昭和基地の維持管理を行います。今回はコロナ禍ということもあり、1年半後に隊員を安全に連れ帰る任務の重責を特に感じ、健康管理の徹底が最大の使命とし「気を引き締めて任務に当たる覚悟です」。
国家事業である南極地域観測隊越冬隊長の人事は、関連省庁や国立大学からの就任が慣例の中、私立大学所属研究者で初めてのこと。出発時には55歳。30年にわたって見つめ続けてきた南極の変化を今後もこの目で確かめたいと「できる範囲で南極の現場に立つことにこだわっていきたい」と話します。


今後は、極域研究に情熱を持って末永く携わろうとする若手研究者を一人でも多く育てていきたいと話す澤柿さん。5年前から法政大学多摩キャンパスの教壇に立ち、憧れを実現した自らの体験を基に、情熱をもって好きなことに一生懸命取り組み、夢を育てることの大切さを講義で学生に伝えています。